磁力の引力と斥力で発電(?)する装置」を簡略・効率化してみたよ

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磁石の力で発電 エコエンジン研究へという記事を見て作ったものです。以前、球体循環装置とかいう発電装置が出た時に『「重力と浮力で発電する装置」の簡略・効率化』というスライドを見て、似たようなもの作れないかと@jun_oyaと議論して作りました。球体循環装置はピンポン玉の動きで水が移動していることを巧妙にカモフラージュした水力発電でした。ただ、今回のエコエンジンなるものは、記事や特許文章をどう解釈しても永久機関をつくろうとしているとしか思えない。どうやって永久機関では無いことを証明するか、というところが苦労しました。スライドでは説明しきれなかった部分をここで書いておきます。

まず、マグネット式エコエンジンの機構説明の部分。記事にはなかったモーターをつけちゃったんですが、特開2011-239676で公開されているマグネット式エコエンジンの特許文章を見ると、「マグネット式エンジンが始動していない時には、図示しない電気モーターがベルト11を通して、永久磁石2が取り付けられた基盤1を回転させることにより、初動のエネルギーを得る。」とあります。バッチリモーターって書いてありますね。特許文章を見ても、その後エネルギーの供給がどこから行われるのかを書いた文章は見当たりません。

この文章の中で参考文献として「特開平5-22894号 クリーンエンジン」「特開平5-312142号 マグネットエンジン」「特開2002-27734号 電動エンジン」「特開2007-74806号 ピストンエンジン」というようなすごく怪しげなタイトルの特許が挙げられています。4つともエンジンのピストンをソレノイドに置き換えれば電気でエンジンを回せるのではないかという内容です。なぜわざわざ直線運動を作ってから回転運動にするのか、なぜ直接電気を回転運動に変換する方法を考えないのか、っていうか回転運動を得たいならモータでいいじゃないか、と色々突っ込むところはあるのですが、まだ外部からエネルギー供給があるだけ実現できそうな気がします。これらの特許に関して「コイルの通電の制御のため、複雑な構造になる」からダメだなどとかいてありますが、電気屋さんをなめてもらっては困ります。例えば、車のエンジンでは、ローターの位置を見ながら点火プラグを制御するということをやっています。同じ事を機械で頑張ることもできますが、電気的にやったほうが簡単に効率がいいものが作れるんです。直流ブラシレスモータなんかもそうですね。こちらはローターの位置によってコイルに流す電流を制御しています。ほら、「コイルの通電の制御」できてるじゃないですか。磁石の極の切り替えを機械でやろうとしたほうがよっぽど複雑です。機械と電気の住み分けをもっと考えましょう。

 

さて、オリジナルのアイデアを簡略化することによって、「結局〇〇じゃん!」っていうことをやりたかったわけですが、磁石を外すのが一番難しかった。スライドでは、力が釣り合うから磁石の意味無いよね、って言うことにしてます。ベルトを外したのはこの説明をする際に力のやり取りが見やすくなるかなと思ったから。しかし、厳密にはこの説明は間違いです。実際には磁石の位置とかクランクの長さなどの違いによって、円盤は回転します。作用・反作用で発生する「力」は厳密に等しいですが、「モーメント」はそうでないということですね。モーメントが発生してしまう以上、スライドの説明は完全に間違いなのですが、分かりやすさを考慮して省略しています。

なぜ、モーメントが発生するのに、エネルギーを発生することができないか。ガウス加速器みたいなものを見ると、なんだか磁力ですごいエネルギーが得られそうな気がするんですよね。確かに一瞬だけを見るとエネルギーを取り出せています。ただ、トータルで見ると結局なにもとりだせないんです。これをスライドで、簡潔に、わかりやすく説明するのは無理だ、と判断して省略しました。

たぶん重力とのアナロジーを考えるとわかりやすいと思います。高いところから低いところへ物体を落とすと、その物体は加速し、運動エネルギーが得られます。さて、このエネルギーはどこから来たのでしょう?重力から得られた?いいえ、違います。高いところと低いところの「位置エネルギー」の差が、運動エネルギーになったのです。運動エネルギーと位置エネルギーの和は力学的エネルギーと言って、これは他のエネルギーに変換しない限り保存されます(中学校でならったよね?)。この位置エネルギーという概念は重力だけではなく、磁力でも使えます。

この機械がやっていることは、磁力で振り子を作っているだけなんですよ。振り子っていうのは、確かに一瞬を見れば、運動エネルギーを取り出せるように見える。だけど、せっかくできた運動エネルギーは、円盤が回転すると、再び位置エネルギーに戻っちゃんですね。結局運動エネルギーは始めに与えたもの以上は得られないわけです。

 

それにしても、こともあろうに高専の教官がこんなものにお墨付きを与えるなんて。
高専出身者として恥ずかしい・・・ 

 

最後に

あのスライドによって、来年あれを卒業研究にするなどという恐ろしい事態を回避できることを祈っています。

 

 

追記:

沖縄高専から公式なコメントが出たので、それについて考察してみた http://shogo82148.hatenablog.com/entry/2011/12/01/002319